2013年6月7日金曜日

クレモナの新作は画一的か?

以前、ある掲示板を読んでいたら、次のような意見があった。

「Cremonaの新作は、どれもこれも同じように見えるのは、僕だけでしょうか?工場製E.H.RothのばらつきよりCremona新作の方がばらつきが小さい様な気がします。Cremonaのヴァイオリン製作学校の出身者達は、大きな工場の技術者達の様な感じがします。」


たぶんクレモナの手工品は、画一的であると言いたいのだろうと思うが、基本的に工場の製品と手工品を比べていることと、クレモナの楽器についての認識の2点で、間違いがあると思う。
 

まず「工場製E.H.RothのばらつきよりCremona新作の方がばらつきが小さい様な気がします。」と言う意見だが、工場の量産品は、値段によって、使っている材料、ニス、機械で作る部分と手で作る部分が全く変わってくるので、最下層品と最上品では音色、外観とも全く違うのは当たり前である。そういうものと比べ、Cremona新作の方がばらつきが小さいのは、当然である。

またクレモナの楽器製作者は、同じ学校を出ていることは事実である。しかし一時期(ちょっと昔だが)、新しい楽器を探して、イタリアの新作を結構試し弾きをしていた時の経験で言うと、同じ程度の金額のクレモナの新作といっても、けっこうばらつきが大きく、音色もそれぞれ個性的だと感じた。ある一定以上のレベルを確保しているという意味では、ばらつきが小さいと言えるかも知れないが、製作者によって音色、音量、外見は様々だった。

欧米人は、なにより個性を重んじ、人と同じことをすることを極端に嫌がる人たちである。日本人がこういう学校を作り、日本人だけを入学させると卒業生はみんな、「大きな工場の技術者達の様な感じ」になる可能性が強いが、欧米人は、共通の技術的基盤の上にオリジナリティを必ず付加していこうと努力する人種である。
むしろ、良くも悪くも、独創性を尊重するあまり、独特の音がするだけで、評価が必要以上に高くなっている製作者が存在するのは、西洋人の陥りやすい欠点でもある。

イタリア的な音という点では、共通していると言いだしたら、フランスはフランス的な音がするしドイツはドイツの音がするじゃないかということになる。


実は、現在、日本に入ってくる大量のクレモナの新作を見ていると、何となくこの人の言いたいことがわかる気はするのだが、実際、弾いてみると今でもクレモナの楽器は、みかけほどは画一的ではないと感じている。



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