2013年6月19日水曜日

第二次世界大戦 太平洋戦線におけるアメリカの戦死者数

第二次世界大戦において日本は、圧倒的なアメリカの戦力の前に敗れ去ったという解釈が一般的である。結果的にその通りだったと思う。
あの戦争を検証しても、局地的には勝てる場面は考えられても、大局的にはどうやっても勝てない。犠牲者数も圧倒的に差がある。

しかし、言われているように「アメリカにとって、太平洋戦線は(ヨーロッパ戦線に比べ)、楽な戦い」だったのだろうかという疑問が生じ、アメリカの太平洋戦線での死傷者数を調べようとしたのだが、これがよくわからない。
幸いなことにネットを見ていたら同じ疑問をもった方がおられ、様々な検証の上、(1) のような数字をあげておられた。

(1) 対独、対日戦における米軍戦死者数

対独戦(欧州戦線)のアメリカ軍戦死者数

陸軍                          177,680人   77.2%
空軍(陸軍航空隊)           61,595人   69.9%
海軍                            10,081人   16.1%
沿岸警備隊                        309人   16.1%
商船乗組員                     1,533人   16.1%
合計                          251,198人



対日戦(太平洋戦線)のアメリカ軍戦死者数

陸軍                            52,475人   22.8%
空軍(陸軍航空隊)           26,524人   30.1%
海軍                            52,533人   83.9%
海兵隊                         24,511人   100%
沿岸警備隊                     1,608人   83.9%
商船乗組員                     7,988人   83.9%
合計                          165,639人  
 

総合計                       416,837人

※この場合の戦死者数には、戦闘以外の死者を含んでいる。戦闘以外とは何か具体的に記載されていないが戦闘重傷後病院死、病死、事故死、訓練死、災害死、行方不明、状況不明、自殺などが含まれると思われる。

調べられた人は、上記の数字(アメリカ軍は対独戦関係で約25万人、対日戦関係で約16万人死亡したと推定)をあげた上で、また次のようにも書いている。

「欧州は陸軍、空軍の墓場、太平洋は海軍、海兵隊の墓場となっている。また太平洋戦線で陸軍航空隊は26,524人戦死している。欧州戦線は61,595人で倍以上だが日本軍は米陸軍航空隊と同等かそれ以上に米海軍航空隊と米海兵隊航空隊とも闘っている。残念だが海軍、海兵隊の戦死者のなかに飛行隊の戦死者は特定されていないが陸、海、海兵航空隊合わせて軽く3万以上の戦死者を出しているのではないか」

従来、空の戦いは、戦争初期以外は、「マリアナの七面鳥打ち」などという言葉があるように、日本側が一方的に落とされたように書いてあるが、空戦でも日本軍はかなり健闘していたことがうかがわれる。

結局、アメリカの第二次世界大戦の戦死者約41万人は、対独戦で約25万1000人、対日戦で約16万5000人失われており、その比は3:2となる。

アメリカ人はあの大戦で戦死者10人中、6人はドイツ人に、4人が日本人に殺されたことになるが、これは「楽な戦い」などと言えるのだろうか。

 
(2) 日本本土空襲におけるB29の損害について
次に、本土空襲の際の米軍側の損害についてあげてみよう。

本土空襲による米軍側被害
  B29 喪失       485機
           損傷   2,707機
   搭乗員戦死  3,041名


結果的に日本の主要都市は焼け野原にされ、防空戦は「失敗」と言うしかない。
私の住む市は、日本海側の小都市だが、1945年7月に空襲を受け、約1500名が亡くなっている。防空は、市内のビルの屋上に対空機関砲があったとか無かったとか、地元の基地から戦闘機が2~3機、飛んだとか飛ばなかったとか言われているが、戦後出版された「○○市空襲誌」には、迎撃について一切触れられていない。
高射砲も戦闘機も絶対数が不足していたのである。こんな体制でなぜ戦争に踏み切ったのか。


しかし、このように全く歯が立たなかったように言われている本土空襲も、上の資料にあるように、故障や事故を含めてではあるが500機近いB29を喪失させている。
終戦時までのB29の生産数は約2500機と言われているので、この喪失数はアメリカにとっても無視できる数字では無いように思うが・・・。(生産機数より喪失・損傷数が多いのは、損傷数が述べによる数のためと推察される)

実は、B29に対して最も損失を与えているのは、あの「とどかない」と言われている高射砲である。次は体当たりによる撃墜が多い。

B29による本土空襲墜落機の詳細は「青森空襲を記録する会」(さくらのレンタルサーバーの方)のホームページの「本土空襲墜落B29調査」のサイトによくまとめられています。
本土空襲墜落機調査 (digitao.sakura.ne.jp)


(3) 神風特攻隊による米軍損傷について
特攻隊も、アメリカのレーダー管制システムの前に無力であったとよく言われているが、この説もよく調べてみると怪しい。

日本側の航空特攻による戦死者3848名
 特攻 陸軍:1185機 海軍:1298機 (合計 2483機)
      ※特攻機の数は資料によって違いがあります 

アメリカ軍の被害(死者8064名  負傷者10708名)
撃沈 約49隻
  護衛空母3   駆逐艦13   護衛駆逐艦2   機雷戦艦艇3
  輸送船9     上陸用舟艇12    その他7

撃破 約268隻
  空母13   護衛空母20   戦艦11   巡洋艦11   駆逐艦84
   護衛駆逐艦24   水上機母艦5   機雷戦艦艇36   輸送船29
   上陸用舟艇19   その他16

となっており、アメリカ軍の資料では、特攻機2550機中、475機(18.6%)が有効で、確実に命中または至近弾効果と判定している。そのため、特攻機に対する特務艦の製造が急務であると提案されている。
        

(4) アメリカ軍の潜水艦の被害について
アメリカの潜水艦の被害については、木俣滋郎氏による「潜水艦攻撃(光人社NF文庫)」という本にまとめられている。

この本によると、第二次世界大戦中、アメリカ軍は大西洋、太平洋含め合計52隻の潜水艦を失っているが、そのうち日本軍との戦闘行為によって失ったのは46隻に及んでいる(大破2隻を含む)。

全損失数の88%が、対日戦で失われている。

※米軍潜水艦の損失を約60隻と書いてある書籍もあるが、これは日本軍はオランダ、イギリス、ソ連(当時のソ連は中立国だが、わからずに撃沈してしまったもの)の潜水艦も沈めているので、それを含めていると思われます。


損失の原因は、水雷艇や駆逐艦、海防船、機雷など多岐にわたるが、艦攻・陸攻によるものや、めずらしいのは自爆(=自分の発射した魚雷がカーブして自艇にあたる)というも一件ある。

潜水艦は撃沈されると、ほとんどの場合、全員が戦死してしまう。アメリカ軍の潜水艦は大小はあるが、一隻に平均80名程度乗員していたようである。木俣氏の著書で合計してみると、3200名以上の搭乗員が対日戦で死亡している。

潜水艦戦は、 大西洋でのUボートが有名なので、正直意外な感じがしたのだが、アメリカ軍潜水艦隊にとっては、太平洋~インド洋の方が苛烈な戦いの場だったのではないだろうか。
もっとも、日本軍の潜水艦はほとんどが沈められ、輸送船も大被害を受けているが・・・。

※(1) でアメリカ軍の商船乗組員の戦死者数が、対独戦1533人、対日戦 7988人となっている。Uボートは輸送線の分断に力をそそぎ、効果を上げたので有名であるが、対米に関しては例外なのでしょうか。少し疑問が残る部分ではあります。



以上のことから考えると、決して、対日戦はアメリカにとって「楽な戦い」などと言えるものではない。

彼らがそれを認めようとしないのは、明らかに差別的な意識がその根底にあると私は見ている。「認めたくない」という感情があるのである。

太平洋戦線におけるアメリカ軍の被害は、戦争に対する客観的評価をいやがる戦後思想と、日本軍への評価を避けたいアメリカの思惑のため、情緒的・感情的な記事が多く、客観的な研究が表に出にくい傾向があるように感じました。

 あと調べて感じたのは、政治家及び軍上層部の判断ミス、参謀の貧困な作戦企画のもと、現場の隊長以下の人たちは、与えられた兵器で懸命に戦い続けたんだということと、上層部が打ち出す現実に合わない策や、その場しのぎのような対策を、現場のものが何とか形あるものにしていくというのは、今に至る日本の悪しき伝統なのかもしれないとも思いました。

 

             

7 件のコメント:

  1. 雨、泥、ジャングル、  太平洋戦線のほうが、はるかに過酷だったようです  日本兵は降伏しないし

    返信削除
  2. 日本兵は降伏しない  これが困ったことでした

    返信削除
  3. 良くできた資料でと思います。同感です。

    返信削除
  4. 日米戦争での米軍の死者数を知りたいと思って探しているうち、ここにたどり着きました。
    私の考えでは、アメリカは日本に暴発させて、それを口実にヨーロッパ戦線に出兵するつもり、つまり、日本軍は簡単につぶせると思っていたのではないでしょうか。ところが案に相違して、日本の抵抗は強く、想定を遙かに超える犠牲を出してしまった。日本を戦争に引きずり込んだ上、大勢の米兵を死なせることになってしまったことを知られたくないために、死者数を曖昧にしたのではないでしょうか。
    当時、差し迫った意味で、アメリカが日本と戦争をしなければならないほどの理由はなかったように思えます。ひとえに、当時のルーズベルト大統領の日本嫌いと、ヨーロッパへ参戦したい気持ちが合わさった結果だったような。(石油を止められたら、日本は戦争するしかないと思うだろうと分かっていたはずです)

    返信削除
  5. 戦争に踏み切ったのは時代としか言えんでしょう。米国は太平洋支配の完成に向けていづれは対立する運命だったし。
    満州は明らかに生命線だった。今のような自由主義経済体制の恩恵を受けれる世界じゃなかった。連合国のような帝国主義先発組のブロック経済は軍の侵略による優位の行使以外の何物でもない。当時の世界は適切な産児制限などできず、日本も膨張する段階だった、今の中国のように世界中に移住しまくれるほど自由な世界でもなかった、許容限界を超えた人口は必ずどこかで破綻する。大量の失職者がさらに増え共産革命に理想を持つものも増えたら国が終わる。
    私は共産革命に巻き込まれて何千万人と死ななかっただけ先人に感謝している。

    返信削除
  6. アメリカは技術も物資も日本よりはるか上で、完膚なきまでに叩きのめされ、現に主要都市は焼け野原、戦後生まれの私は教科書や映像でしか知識はありませんが、世間知らずの馬鹿な指導者が狡猾な英露米の罠にはめられて一文無しになったという歴史観をもっていました。案外、善戦していたということを戦死者数から感じます。同盟国のドイツは科学技術は英米並みである為、戦死者数はドイツ戦に偏ってると思い込んでいました。日本は尉官以下の兵士は優秀で勇敢でアメリカ以上だったかもしれません。ただ、作戦を指導する参謀以上が学校の勉強は優秀だが実践には無能で卑しい卑怯者が多かったようですね。それにしても、戦死した人々があまりにも気の毒で。未だに尾を引いて右往左往している日本がかわいそうで。狡猾な中、露、韓、朝に未だに翻弄され、米に支配されて。斃れた先達たちは何というでしょう。現代の日本社会も同じで、卑怯で要領の良い者が君臨し、正直な者たちがしんどい思いをして底辺を支えている。時代は変わっても本質は何も変わっていない。

    返信削除
  7. 日本側の戦死者の中に病死、餓死者が含まれているのであれば、実際の戦闘で死亡した日本兵はアメリカ兵よりかなり少なくなるなずです。

    返信削除