今の車の前には、ゴルフⅡCLI(MT)に12年乗っていた。
もう、見たこともない人が多いと思いますが、記憶に残っていることを書いておきます。
ゴルフⅡを購入しようと思ったのは、そのスタイルにひかれたからであった。夕刻、自転車に乗っていた私を、濃紺のゴルフⅡが追い越していった。その斜め後ろ姿が、とても美しかった。「ああ、こういう車に乗ってみたいなあ」と思わせるに十分な美しさがあった。
当時、ゴルフⅡはそろそろモデルチェンジのうわさが出ており、機械的にも安定しているかと思ったこと、ディラー(ヤナセだが)も全国に配置され、修理にもあまり不安が無くなっていたことなどから、国産に比べると高い買い物だったが、購入した次第である。
乗ってみての感想は、簡単に言うと
「ドイツ人恐るべし」 であった。
当時、日本はバブルに移行しようとする時期で、欧米なにするものぞという雰囲気もあった時代である。
そんな時に「東洋の方、自動車というのはこう作るものだよ」
というドイツ人の声が聞こえた。
これは名車であると素直に思う。
何が優れていたのか
書いてしまえば、コンパクトな外観からは想像できない広い室内、走る、曲がる、止まるの基本性能の高さ、腰の痛くならない良質のシート、何年たっても錆のこない塗装、衝突安全性、安定した高速性能等、車としての必要な諸要素が高い時点でバランスが取れていた・・という言い方になるのだが、ただコーナーを曲がるだけで、その正確に曲がる気持ちよさに感動した車は、初めてだった。どの面を取り上げても、とても当時の日本車の及ぶものではなかった。
乗って良し、走って良し、家族を乗せて良し、スポーティーに走ってもある程度答えてくれる万能車だった。
この車を作った技術者は、「世界一の大衆車を作ろう」と真面目に考え、そして実際、作り上げたのである。ドイツ人の論理性と妥協をしないという頑固さが良い面に出た一例であろう。
しかし、12年乗って、一ヵ月に1回は具合が悪くなるような状態になり、乗り続けることに不安がでてきたこともあって、ゴルフⅣに乗り換えたのである。その裏には、VWに対する信頼感があったことは間違いない。
ところが、その信頼感は、半分裏切ら、半分満足するという中途半端な結果になった。
ゴルフⅡが、まだ若くて素朴だが、顔立ちは垢抜けたところがあり(イタリアの血が流れているらしい・・・・)骨太で誠実な青年とすると、ゴルフⅣは、でっぷりと贅肉がついて(脂肪の下には、まだ筋肉はついてはいるが)、「世の中、マーケティングに妥協することも必要なんだよな」などとうそぶいている中年の男となっていた。
あの世界一の大衆車を作るんだという純粋で高い志に、迷いが見られる車になっていた。
この混乱はゴルフ6ぐらいまで続いたように見える。
今でも、ゴルフⅡが新車で売っていたら買いたいというか、あの時、少しお金をかけて修理をして、手放さなければ良かったなあと思う時もあるが、高速を走ると、100㎞で室内がうるさ過ぎて会話もできないという車は、今の時代、ダメでしょうね。
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