2016年2月23日火曜日

マルチェロ君との会話 チェロの弦を換えるの巻

  ※マルチェロ君は今のチェロの呼び名です。

マルチェロ君
 ええっとですね。特に待遇に不満はありませんがね。毎日とは言いませんが、もう少し弾いてくれるとありがたいんですがね。



 うん、わかってるんだけど。何か定年を迎えたら意気消沈というのか、何をする気もしなくなっちゃってねえ。
定年になったら、バリバリ弾くぞと思ってたんだけどね。
ごめんなあ。

マルチェロ君 
 今まで、結構仕事に打ち込むタイプでしたし、忙しかったから、その反動ですかね。仕方ないですよね。そういう時は無理しないのが一番ですよ。
でも次の定演はマーラー五番ですよ。そろそろ練習しないと間に合いませんよ。


 やっと、譜面を読んで指使いを書い
これは本物のマルチェロ君
た段階だもんなあ。出足遅いのはわかってるよ。ただなんか、この曲やる気がおきなくてねえ。

何回も言うけど五番ってアダージェットだけ、単独でやればいいと思わない?結局、五番やるのはここをやりたいからだろ。後はいらないよね。長いだけで・・・・。

マルチェロ君
 そんな、マーラー大好きという人全員を敵に回すような言い方はやめましょう。それに、アダージェット以外にも、結構、魅力的なメロディがチェロにはありますよ。あそこで、私を十分鳴らしていただけるとうれしいんですけど。


 わかったよ。がんばってみる。
 でも、君とは長くつきあった仲だから率直に言うけど、最近、君の声は「だみ声」だよね。しっとり感がないというか・・・。若い時は、澄んだ声でそのなかにも甘さがあって弾いているだけで気持ちよかったんだけど、声、変わったよね。

マルチェロ君
 私も、45歳ですよ。いつまでも甘い声ではありません。だいたいそうなるように弦を換えたのはあなたじゃありませんか。2年前に弦を換えた時は、なかなか渋くていい音だなあって言ってましたよ。
それに、最近私の声に伸びがないのは、弦が劣化してるんですよ。今のA線のパッシオーネは2年以上使ってますよね。弦は弾かなくても張っておくだけでも劣化していくんですよ。あれでいい声を出せと言われても、さすがに無理ですね。


 確かになあ。でも弦がかわっただけでなく、君自身も、声質が変わったんだと思うんだ。僕の心境や好みの変化もあるけど、声質が変わったので今まで張っていたラーセンがあわなくなったということもあるんじゃないかなあ。
1年ほど前に、A線をヤーガーやラーセンのソリストに換えてみたことがあったけど、やはり昔の声と同じじゃなかったもんなあ。

マルチェロ君
 あなたも私も、それ相応の年月が流れたと言うことですよ。それに、昔の使い古しのラーセンに換えて「ダメだなあ」とか言われてもねえ。せめてA線だけ新品に換えてもらえると、もっと、しっとりとした音がすると思いますよ。


 わかったよ。最近、何となく弾かなくなった原因に、音色の劣化もあったのかもしれないね。でも新しい弦買うのもつらいなあ。昔買って、気に入らなくてそのままって弦が結構あるから、それ張ってみるかね。ああラーセンソリストなら、以前買った新品が残っているから、一度、A線換えてみる? 

マルチェロ君
 2年前には、この組み合わせでバランス取れたとか言って喜んでませんでしたか。ラーセン張っても、きっと気に入らなくてはずしてしまいますよ。まあご主人がよければ、私はどんな弦でも精一杯歌いますけどね。


というわけで、マルチェロ君との話し合いの結果、弦が劣化していることは一致したので、パッシオーネを注文して張り替えました。
予想以上に、鳴りが生き生きとしたものに変わり、音量も違います。良い音になりました。


 おお、いい声になったぞ 。全然違うなあ。艶もあり甘さもあるが渋さも感じる、よい年を重ねた中年の声だなあ。

マルチェロ君
 でしょう?。本来、私、イタリアの色男ですからね。後は、よく練習して、十分響かせてくださいな。


 ハイハイ。


弦は劣化するのはわかっていたつもりですが、特にパッシオーネは、古くなると弾く気がなくなるほど、音色が艶を失いますね。劣化も早い弦と思います。また時期を見て、G線とC線も順次交換したほうがよさそうです。


結局、
楽器(イタリア)
 A線 パッシオーネ(ドイツ)
 D線 エヴァピラッィ ゴールド(ドイツ) 
 G線 ラーセン マグナコア(デンマーク)
 C線  スピロコア(タングステン Weich)(オーストリア)
という華麗なEU加盟国による混成部隊を、六十を超えたヘタッピ日本人が弾くという運用になりそうです。

でも、彼ももっとうまい人にもらわれていたら、よく歌う楽器になっていたかも知れないと思うと、マルチェロ君には悪いことをしているなあとも感じています。




 




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