2016年1月9日土曜日

チューナーアプリは正確なのか?

便利な世の中になったもので、最近は私のような年齢の者でも、スマホにチューナーのアプリを入れて利用するようになっている。ここ2年ほどは、演奏会や練習の時は、KORGのチューナーを使うのだが、家で個人練習する時はスマホに入れたアプリチューナーを、使用することが多かった。気軽に使えるのが利点である。

使っていたのは「gStrings」というもので、スタイリッシュで細かい設定もできるので重宝していた。

しかし、そのうち、どうも専用チューナーとアプリチューナーを使った時で、「なにかが違う」という違和感を感じるようになったのである。

ひょっとしたら、アプリのチューナーは正確じゃないんじゃないかと疑問がわくようになったので、調べてみた。

まず、このチューナーから、442.0Hzの音を出す。
 その音を、KORG  DT-2という
かなり古いですが、専用機に聞かせると、さすがにきちんと真ん中で定位しますね。たぶん、この音は正確だろうと推定できます。
ではこの音を 「gStrings」に聞かせてみると、441.8Hzと判定していますね。針はきちんと定位しているので、このアプリは±0.2ぐらいは、許容範囲と考えているということでしょう。

また「gStrings」にも、音を出す機能があるので、基本442.0Hzに設定して、それぞれA D G C音を出し、それを KORG  DT-2に聞かせてみると、いずれもその音は、目盛り一つ分(2セント)ぐらい、低いですよという判定が出る。特にA音は目盛り二つ分(4セント)ほど低いという判定である。目盛り二つ違うと、かなり音程の違いを感じるので、どうも、精度はよくないようである。








それではということで、ネットで正確であるという定評がある「Da Tuner Lite」に聞かせると、これも音は合っているという判定ですが、441.9Hzと出ています。これくらいだったら十分、正確と言ってもいいかもしれません。
もう他にないかなということで、なにげに「Tuner Ptched」というものをダウンロードしてみました。なんと442Hzぴったりです。これにも、音を出す機能があるので、ADGC音をKORG  DT-2に聞かせると、いずれもど真ん中で定位する。
それならということで、KORG  DT-2とこのアプリを二つ並べ、実際にチェロの音あわせを四弦でしてみたら、ほとんど専門のチューナーと同じ動きをする。針の動きも、ややKORG  DT-2の方が敏感ではあるが、ほとんど同じである。これは拾い物かも知れません。






結論は、アプリのチューナーの問題点は、
①正確さに関して、精密でないものがあること。
②音程が合っているという判定に幅があること。
 (ただしこれはアプリ及び専用機共通の問題でもあります。)
の2点だと思います。

①に関しては、アプリをよく選べば、思ったよりは精密に音程を測定しているというのが実感です。ただ今回はA音を中心に調べましたが、音全域に渡って正しい判定をするかどうかには、疑問がのこります。

②に関しては、音あわせの際は、普通、針の動きしか見ませんが、基準音を中心に小数点以下は±ある程度の範囲にあれば、音は合っていると判定してしまいます。どこまで許容するかはアプリによって違うようです。
「gStrings」は、許容範囲を広くとる傾向があり、また測定自体もやや誤差があるので、精密さには欠けるようです。そのことが違和感を感じた原因でしょう。また「gStrings」は、低いC音は拾いにくい傾向があります。

このようなアプリは、正確なものを選び、またその癖をつかんで使えば、十分、実用に供するものだとわかりました。今回の事で見つけた「Tuner Ptched」なら、十分使えそうですただ音域全般の正確さには不安が残ります。また全体練習中、横でティンパニーや金管がガンガン音出ししている中では、マイク等が繋げないスマホでは音あわせは不可能でしょう。

結局のところ
一人で練習もしくは個人レッスンを受ける時などは、スマホで
演奏会や全体練習、発表会の時は、専用機でという、無難なというか普通の結論になってしまいました。

あと今回のことで考えさせられたことは、音程が合っていると判定する許容範囲をどこまで取るかという設定上の問題です。これはアブリや専用機に関係なく、チューナー自体のかかえる問題です。

私はいまだにKORG  DT-2という機種を使っています。一時、KORG CAというのを買ったのですが、二つを比べると、DT-2のほうが精度が高いと感じていましたが、これは精度の問題ではなくこの許容範囲の違いが、そう感じさせていたようです。
二つ並べて音を合わせると、DT-2は「目盛り二つ分ぐらい音が違うよ。まだまだダメダメ」と判定する音を、CAは針がきちんと定位し「大丈夫、きちんとあってるよ」と判定します。音が合っているという許容範囲が広すぎる感じで、こんなんでいいのかとさえ思います。「gStrings」は±0.2ぐらいは許容範囲ではないかと書きましたが、ということはこういう許容範囲の広いチューナーで音あわせをした場合には、上下0.4Hzの差が出てくるということで、1Hzの約半分の誤差というのは、演奏上無視できない差ではないかと私には思えます。
こういうチューナーは、まだ音の不安定な小学生の吹奏楽ぐらいなら、音あわせでイライラすることなく使えるのでちょうど良いかもしれませんが。

反面、 DT-2は、挙動が神経質で、なかなか定位せず、音の出し始めとその後でも針(厳密に言うと針ではありませんが)が動き続けます。
これは弾き方の問題でもありますが、あまり定位しない時には、針の振れが真ん中を中心に触れるような状態で、合ったと判定しています。これはこれで、使いにくいと思う人もいるかもしれません。

最近は、駒に直接付けるようなチューナーもあるようで、音が合うと画面全体が緑色になるそうです。目が悪くなった私には、とても魅力的に見えます。しかし、どの範囲で緑色になる設定でしょうか。私のように、音合わせに神経質な人間は、そんなことが気になるので、購入できずにいます。 

演奏前にA音をあわせますが、金管などは、それで他の音まで合っているとは構造上言えません。また正確に音程を合わせたとしても、弦も金管も演奏中に楽器が暖まったり、観客が入り気温が上がって、変化してしまうことは止めようがありません。演奏が終わった時点で、全員が音を出せば、おそらく全員微妙に音程は違っているでしょう。ですからそんなにこだわる必要もないことなのかも知れません。

そもそもこんなに音程が悪いのに、何故、私は音あわせだけ神経質なのでしようか?
きっと音程が悪いが故に、せめて開放弦はきっちり合わせたいのでしょうね。


※先ほど、テレビで日本の職人さんの紹介というような番組があり、音叉を作っている人が紹介されていました。
その人が手仕事で作った音叉を、テレビ局は例のスマホで判定して、「440.03Hz 確かにすばらしい仕事です。」と言っていました。
どのアプリか判別できなかったのですが、職人さんが心血を注ぎ、製作した音叉を、スマホで判定されてはかないませんね。スマホでコンマ二位まで、正確にはかれるとも思えません。
さすが民放という感じにとられてしまうのは、番組制作上まずいんじゃないでしょうかね。






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