2015年11月4日水曜日

弦楽器と湿度  ヨーロッパは乾燥していない?

一般的に、ヨー ロッパの気候は乾燥しており、楽器も鳴りやすいが、日本へ持って帰ると湿気が多いので、鳴らなくなると言われる。

昔習った地理でも、地中海性気候とか西岸海洋性気候との違いはあるが、どちらも年間降水量は1000mmに満たず、確かにヨーロッパは雨が少なかった。

一方、私の住む北陸は、「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるように、一年中湿度が大変高く、楽器の環境としては最悪かなと漠然と思っていた。

と ころが最近、「イタリアのクレモナは霧が出ることが多く湿度は高い」という一文を見つけた。そういえば、「アマデウス」という映画があったが、その中のウィーンは雪が降っており、大変寒そうであった。
雪が降るとすれば湿度は高いはずである。


結局、本当のところはどうなのであろう。
調べてみたが、案外、都市ごとの月別の平均気温、降水量、湿度が記載されている資料がない。以下、あちこちからひっぱってきて作成したので、気温・降水量と湿度の年度が違うものを表にしたものもありますが、一応の目安にはなると思います。





 (1) 湿度について
降水量を見ると、確かに日本はダントツに雨が多い。年間降水量はヨーロッパは500mm~700mmだが、東京で1400mm、私の住む北陸などは、2000mm以上で、毎月三桁代の雨が降る。

しかし、楽器に影響を与えると考えられる湿度を年平均の低い順で並べると、意外な結果になる。
①東京     年平均66.0%
②ウィーン                 71.4%
③ベルリン                 75.3%
④北陸A市        75.8%
⑤ローマ          76.7%
⑥ロンドン         92.3%

となり、なんと東京が一番乾燥している。そしてベルリン、北陸、ローマはほぼ同じである。

ローマは思ったより一年を通して湿度が高い。
夏の降水量がほとんどない(7月は16mm)のに、湿度は70%以上あるのは、地中海からの風の影響だろうか。またローマは年間を通して湿度は70%台~80%台で、北陸とそんなに違いを感じない。

ウィーンとベルリンは、夏を中心に約半年ほど湿度は60%台と低めで確かに乾燥しいてる。だが、10月から2月ごろは、ほとんど北陸と同じか、むしろ高い月もある。

東京は、6月から9月の湿度は70%台で高めだが、それでもローマとそんなに違うわけでもない。反対に冬の湿度の50%台というのは、ヨーロッパの都市のどの季節と比べても、最も乾燥が激しい。

ロンドンの湿度は、なんとほとんど一年中90%台である。わが北陸も問題にならないほど、湿気た都市である。さすが霧のロンドンである。

※しかし、イギリスって夏でも涼しいというより寒いんですね。夏でも私の住む都市の5月上旬の気温です。ようこんな国民がアフリカ(そういえば中央アフリカは避けていますが)とかシンガポールあたりを植民地にしたもんですね。



 (2) 気温について
気温は、確かに日本の夏(7、8月)は約27度で暑い。ヨーロッパは一般的に16度~23度で冷涼である。これではたぶん冷房は普及していなくて、30度を超えるとしんどいはずである。しかし、ヨーロッパ人は暑い=苦という感覚は薄いそうだが・・。
冬は、ウィーンは1月の平均は(-)で寒さは厳しい。ローマは1月は9度もあり温暖である。他、東京、北陸、ロンドン、ベルリンの気温はほとんど同じである。


結局、結論は
「日本は湿度が高く、ヨーロッパは乾燥している」とは、一概には言えないというものだった。


むしろ、先に述べたように、年間の平均では、東京が一番乾燥しており、特に冬の乾燥は際立っている。次にウィーンがきて、ベルリン、ローマ、北陸A市が僅差で並び、ロンドンは大変湿度が高い。

日本の場合は、降水量が極端に多いこと、また夏の気温が高いため、蒸し暑くいためすごしにくいこと、またカビなども発生しやすいため、湿潤で湿度の高い気候と感じやすいこと。
ヨーロッパは、年間を通して降水量が少なく、特に夏の気温は低いので、全体的に過ごしやすく感じるので、ヨーロッパはからっと乾燥しているという伝説ができたのではないだろうか。

ロンドンなどは、もう少し気温が高ければ、国中カビだらけになるだろう。

ただ、飽和水蒸気量という要素を考えると、日本の夏、特に北陸は空気中の水蒸気の量が多いので、楽器の管理に注意は必要だと思う。ただ他の季節は、飽和水蒸気量という要素を考慮しても、日本に比べヨーロッパは乾燥しているとは言えないようである。

楽器商は、日本は湿度が高いためヨーロッパから楽器を持ってきた時には注意が必要で、なかには特別なチューニングを行ってお客様に提供していますなどと言う人もいるが、どうなんだろうね。
雪が降っている冬のウィーンから、からからに乾燥した東京に楽器をもってきた場合と、夏、ベルリンから北陸に楽器を移動した場合でも、同じ「チューニング」とやらをするのだろうか。


日本で注意することは以下のようになろうか。
東京は、冬はヨーロッパよりも乾燥した状態が続くので、要注意ですね。楽器の割れ、ゆがみ等が懸念されるので、加湿などの配慮が必要に思いました。正直、東京に住んでいた時は何もしなかったのですが、今回、調べてみてちょっと何かしたほうがよかったかなと感じました。

北陸の方は、やはり1年を通して湿度が高いうえに夏は高温になるので、楽器の剥がれやカビに注意が必要になる。

楽器を置く場所は難しいのですが、 私は、楽器を南の居間に置くようにしています。ここは、冬はエアコンを使用しますし、日が差せば結構暖かいです。夏も、エアコンを使用しますので、湿度の高さはある程度避けるようにできますが、あまり乾燥しすぎないように、時々窓をあけて風を通すようにしています。

今回感じたのは、結局、温帯地方の気温や湿度はそんなに大きな差はないので、熱帯、冷帯、寒帯(ここで楽器を弾く人はいないか)、砂漠地方の人たちに比べれば、楽器の管理は随分と楽なんだろうなということと、そういう地域性より現代社会では、エアコン使用(特に夏と冬かな)による極端な温度と湿度の変化の方が、楽器に与える影響が大きいのではないかということでした。

ひよっとしたら楽器を置く場所によっては、エアコンのあまり普及していないヨーロッパより、東京などの太平洋沿岸の方が、1年を通して乾燥度が高いかもしれません。

現代に生きる楽器たちは、短い時間で大きな温度と湿度の変化に(飛行機に乗せると気圧差も)、常に繰り返しさらされるわけで、寿命とかにも関係はしないのかなあと感じます。














0 件のコメント:

コメントを投稿