2014年9月10日水曜日

チェロという楽器  弦のお話


こういうブログでは定番の、弦についての話を書いてみます。
 

いろいろな種類の弦が次々と販売される時代となりました。
新しい弦を張る時は、結構わくわくするのですが、大抵「こんなものかな」で終わることも多いです。それでも諦めきれず、しばらく使ってみるが、結局もとに戻してしまうこともしばしばです。

ただ、手軽に音色がかわるので、また新たな弦を注文してしまう。結果、使わなくなった弦がたまっていくこととなる。それも主にA線ばかりが・・・。

弦の組合せは、本当に難しいです。
日本では、一応の定番(ラーセンとスピロコアの組み合わせ等)はありますが、他の方のブログを見させていただいても、百花繚乱という感じで、様々な弦が推奨されている。どれが正しいのか、正解は無いというか、人によって正解は違うと感じます。

理由は下記のようなことがあるからでしょう。

①人によって音色の好みが違うこと。そのため評判の良い弦が自分の好みに合うとは限らない。
②弦は楽器との相性があり、人の楽器で艶っぽく聞こえた弦も、自分の楽器に張ると神経質な細い音になってしまうような場合がある。人の楽器と同じような響きを自分の楽器でも得られる保障はない。
③楽器は経年変化で音色が変わる時があります。また自分の好みの音色も年齢によって変化します。そのため今まで良いと思っていた弦の組み合わせが、自分の好みや楽器に合わなくなってしまうことがある。
④AD 線を替えると、GC線の鳴りも変化します。反対にGC線はAD線の鳴りに影響します。
⑤当日はなんてこともない音色だった弦が、三日経って弾くと、なかなか良い音に変化している時もある。
⑥四弦とも張り替えると、駒を立て直す手間が加わる場合がありますが、駒と楽器の接触面が安定するのに数日かかるような感じがします。弦の本当の鳴りは、この場合も少し待たないとわかりません。

おまけに、現在は多種多様な弦が販売されており、しかもそれぞれに強、普通、弱の弦が設定されているという、何とも手間がかかり、はまり出すときりがない世界ですね。


結局、弦の組み合わせは、人の意見を参考にしながらも、自分が納得するまで試行錯誤を繰り返すしかないという、ある意味、身も蓋もない結論になってしまいます。
ただ弦を換えると、変化はだいたいその瞬間にわかるので、試行錯誤自体楽しみでもあります。まあお金が続けばですが。


私の好みで、私の楽器でという限定で、弦について書いてみます。

現在使用中の楽器で、一番良かった組み合わせは

やや派手目で軽々と鳴る組み合わせなら
 (楽器も私も若かった時です)
  A線 ラーセン(ソリスト) 
  D線 ラーセン(ソリスト) 
  G線 スピロコア(タングステン Weich) ←Mittelではありません
 C線 スピロコア(タングステン Weich) ←    〃

濁音系でやや渋い感じで鳴る組み合わせなら
 (楽器は中年、私は初老かなあ)
 A線 パッシオーネ
 D線 エヴァピラッィ ゴールド 
 G線 ラーセン マグナコア
 C線  スピロコア(タングステン Weich) です。

濁音系ならガット弦もいいのでしょうが、私は使いません。
オーケストラなどに入っていると、音合わせなど管理が大変ということ(私は音合わせにもの凄く神経質です・・。あんなに音程が不正確なのに・・)、寿命が短いこと、またオケのなかで音が埋もれやすく、自分の音がとらえらきれないこと(まあオケ全体が大音量の時はスチール弦でもなにも聞こえませんが・・。)、また特に「演奏中に切れたら」という不安が去らない(学生の時のトラウマ)ということなどが理由です。

また、あまりにキラキラと響く派手な感じの音は好まないので、文中に書いてある派手目と言う言葉は、割り引いてとらえてください。


以下、私の弦の遍歴をだらだらと書いてみます。
 学生時代
 最初・・・全弦スピロコアが張ってあった。
  その後・・A線だけヤーガーに  
 

金銭的には厳しい学生生活だったので、あれこれ試す余裕はなかった。楽器は大学からの貸与品なので、あまり良いものではない。少しでもキンキンとした音を何とかしたいと思いヤーガーをはった。四弦のバランスなどは考えてなかった。

一度だけ、A線だけガット弦に替えたが、二週間後、練習中に「バツン」という音とともに切れて以来、現在に至るも使用していない。切れた瞬間の「せっかく買ったのに」という無念の思いが忘れられないのです。

1代目の楽器(ドイツの量産品)
 A線 ヤーガー(ドルチェ) 

  D線 ラーセン 
  G線 プリム 
  C線 スピロコア(タングステン)
 

この楽器は、量産品(シモーラ 下倉楽器)だったが、結構よく鳴る楽器だった。反面、音色は単純だっため、A線はヤーガー(ドルチェ)に、またC線はドロンとした切れのない音だったので、スピロコアになった。
このころ、ヤーガー(ドルチェ)はよく使われていたようです。ただご存じのように切れやすい弦で、音あわせの時はもちろん、買って張っている時に切れてしまったこともある。

このころ20代~30代が、いろいろ弦を替えておもしろかった時期である。偶然にも、A、G、Cはお習いしている先生と同じになった。先生からD線のメーカーも聞いたのだが、今となっては忘れてしまったが、確か一度、先生と同じD線にしてみたのだが、どうも私の楽器ではおさまりが悪かった覚えがある。最後にラーセンにして、四弦の音色等のつながりも、まあなんとかという感じだった。
いろいろ楽器について先生と談話して楽しかった時期でもある。


2代目の楽器①(イタリア たぶん手工品)
  A線 ラーセン(ソリスト) 
  D線 ラーセン 
  G線 スピロコア(タングステン Mittel)
 C線 スピロコア(タングステン Mittel)

最初、1代目の楽器と同じにしてみたのだが、どうもよくありません。あんなに心に響いたヤーガーが、か細く神経質な感じに聞こえてしまう。で、結局上記のような組み合わせで弾いていた時期が長かった。一応、今でも定番の組み合わせの一つですね。
あまり派手な音色を求める方ではないのだが、アマオケにも所属していたので、少し明確な音色を無意識のうちに求めたのだと思う。

ただ、この組み合わせは、
A線→少し派手 
D線→A線より若干地味 
GC線→底鳴りするような力強い響き
という感じで、つながりの悪さをずっと感じながら使っていた。

この場合、D線が他に比べ落ち込む感じがあったので、ラーセン(ソリスト)を張った時もあるが、AD線→派手 となり、ますますGC線とのつながりの悪さが目立つようになってしまった。 

この組み合わせに限らず、チェロはD線の選択が難しいように思う。

※チェロのGC線とA線に求める音色は、実は同じではない(このころの私は・・ですが)ので、四弦のバランスというかつながりが悪くなるのである。
私の楽器のCG線の音は、ぼんやりした感じで鳴るので、もっと張りのある堅めの音が欲しかった。一方、A線は艶っぽい音で朗々と鳴って欲しいみたいな感じがあるので、あまり堅い音の線は選ばない。結果、A線とGC線の音色が違う組み合わせになりやすい。そのつながりをD線で調整しようとしていたのだと思います。
同じメーカーの弦でそろえれば、そういう問題はなくなるのでしょうが・・・。
そういえば全弦スピロコアという人もおられたなあ。

2代目の楽器②
  A線 ラーセン(ソリスト) 
  D線 ラーセン(ソリスト) 
  G線 スピロコア(タングステン Weich)
 C線 スピロコア(タングステン Weich)

ネックの修理をしてもらった時に、楽器店の方でGC線をスピロコア(タングステン Weich)に替えてくれた。
確かに、同じスピロコアでもWeichは、底鳴りするような力強さは若干なくなり、その分、軽く鳴る感じになる。
 この場合、AGCは派手めの音色になるので、D線をラーセンのソリストに替えたら、バランスが取れた。

この組み合わせは四弦のつながりも良く、やや派手目の音色で軽々と鳴る。 駒もベルギー駒になり、駒の高さも高くなっている。よく鳴るように調整してくれたようである。
 

ようやくバランスの取れた安定した組み合わせになったので、これでしばらく弾いていたのだが、そのうち音色に違和感を感じるようになった。

例えるなら、素直できちんと育てた我が子を東京にしばらく出したら、化粧も派手に、プチ整形をして帰ってきたという印象で、お前はそういう子じゃなかったろうに・・という感じかなあと思っていた。

ただ後で気付いたのだが、この頃には楽器自体も40年以上経過し、音色が変化しており、また自分の好みの音色も加齢と共に変わっていたようである。それでこの組み合わせに違和感を感じるようになったのだろう。
確かに40代の中年のおじさんに、20代の若い衣服は似合いませんよね。年齢に相応しい服装を考えてあげるべき時期だったのでしょう。


しかし、せっかくとれたバランスを崩すのも億劫なので、ずるずるとそのまま弾いていたのだが、アマオケを休団したことをきっかけとして、新しい組み合わせにチャレンジすることとした。

 2代目の楽器③
 A線 パッシオーネ
 D線 パッシオーネ 
 G線 ラーセン マグナコア
 C線  スピロコア(タングステン Weich)

ネットで情報を集めながら、自分の好みの音になるかと期待しての組み合わせである。音色はまあまあだったが、この組み合わせでも、AD線とGC線の性格が違う。
パッシオーネはガット弦の音をめざしているということだか、若干人工的な音という感じがする。
ラーセン マグナコアはスピロコア(タングステン)に比べると、鳴りが軽い。最初はC線もラーセン マグナコアにしたのだが、音色がC線にしては軽すぎる感じが嫌になり、G線のマグナコアと音色の感じは似ているが、底鳴り感もあるスピロコア(タングステン Weich)にかえてみた。
またこの組み合わせでは、D線の落ち込みが大変目立つ。シャコンヌで裏板の調整をしてもらった時にも、そのことを指摘された。「わかってはいるんだけどねえ」と言う感じで、このころには弦をあれこれ換えるのが億劫になり出していた時期でもある。



写真の取り方が悪いせいか 
A D Gは同じmakerに見えますね。
2代目の楽器④(~現在)
 A線 パッシオーネ
 D線 エヴァピラッィ ゴールド 
 G線 ラーセン マグナコア
 C線  スピロコア(タングステン Weich)

D線をエヴァに換えただけです。これはパッシオーネを少し堅くしたような音色で、D線の落ち見込みが無くなり、換えて良かったです。四弦とも、銘柄が違いますが音色のバランスは取れているように思います。

国名が
  楽器   イタリア
   A線  ドイツ
    D線  ドイツ
    G線  デンマーク
    C線  オーストリア
  弾く人 日本

というEU加盟国というか、枢軸国色の強い混成部隊です。

ただ、全体に「清音」(と言う言葉はないが、清らかで透明感ある音)でなく「濁音」(滋味深いといえなくもない音)という感じです。

現在の楽器の状態、音色にも合っており、これで私には十分です。
まあ、ネットで新しい弦が販売されると心は動くんですけどね・・・。 


豆が新しいととてもおいしいです
閉話休題
このような音が好みになったころに、ちょうどコーヒーもフレンチブレスでいれるようになりました。それも、豆を極微粉にしていれます。コーヒーの粉を飲んでいるようなもんです。
味の好みも、音の好みも、清らかな味から渋めの味に変化しました。楽器自身もやや乾燥した感じの、いわゆる古い楽器の音になりつつあります。
加齢という現象は、人も楽器も避けられないですね。









2 件のコメント:

  1. 大変参考になりました。
    独身でお金があったときに4本ともラーセンにして、それはそれでどれもしっかりなるし劣化も少ないように思えましたが、ネットでCGをスピロコア(特にCはタングステン)にすると”爆音系”の組み合わせになると聞いてしばらくそうしていました。最近、アマオケではみんなそうしているし、プロでも多いですね。
    だんだん弦に使えるお金がなくなってメルカリで新品と称する弦が安く出てたら買って張ってます。節操ない感じですが、安いからいろいろと試せると思っています。今はADはクロムコアplus
    (2本で2,880円)、GCはもうすぐ到着しますがスピロコアタングステンWeich(2本で6,800円)です。Weichというのが使っている人が少なく、こちらのブログを拝見して買ってみてよかったー、という次第です。
    3年前のご記事になにごとか、と思われたかもしれませんがお礼をかねて投稿させていただきました。
    セロ弾き仲間

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    1. 書き込みいただいてありがとうございます。少しでもお役に立てたなら、うれしいです。
      いろいろな弦が出されて、買って試してみたくても、値段がなあ(特にC、G線は高いですね)と思っていましたが、今はメルカリという手があるんですね。私も参考にさせいただきました。

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