2018年6月30日土曜日

サン・サーンス 「白鳥」 の名演奏が見つからない件② アルト・ノラスとイッサーリス 

サン・サーンス「白鳥」の名演奏がなかなか見あたらないと書きました。

演奏に当たって、「芸術性」の追求は必須です。

ただ、登っても、登っても、なお仰ぎ見る高さを持つ、巨大な峰のような曲もあれば、ある程度登ると、それ以上の追求が難しくなる曲もあるように思います。

どんな曲でも、優れた演奏家は、紙を一枚一枚重ねるように、さらなる高みを目指していきますが、この「白鳥」は、どちらかというと、この後者の曲なのかもしれません。



「白鳥」について書いてみようと思い、ネットでこの曲を調べていると、「アルト・ノラス 」という人がよく出てきました。評判も良いようですので演奏をあげておきます。動画は絵で、音だけですが・・。
(見られない方はこちらでhttps://www.youtube.com/watch?v=-eb-n5e8SPI)

確かに、美しい演奏です。変な色づけをしない、すみずみまで細かい配慮をした丁寧な弾き方です。たぶん日本人の好みにも合う。音色も美しい。

ただ、聴きこんでいくと演奏の背後に「厳格で強靱」なるものを感じるようになります。一点一画もおろそかにしない厳しさ。何やら堂々とした白鳥でもあります。聴いていると自然と姿勢がよくなるような感じです。白鳥は、もう少し繊細な陰影を感じさせて欲しい。(私の個人の感じですよ)


もう一つ、演奏をあげておきます。イッサーリスです。
これは二つのピアノで伴奏しています。本来の形ですね。 

白鳥は、テンポが揺れるので、演奏者と伴奏者があわなくなることが、プロでもよく見られます。ピアノとチェロの配置は本来、こういう形が望ましいのでしょう。
また伴奏者とは、演奏者とともに芸術を作り上げていく同行者なのだということがわかる、これも美しい演奏だと思います。ただ、ゥアアーンといった癖を感じる弾き方は気になるところです。

また動画では、イッサーリスの蝋人形のような顔がちょっといただけません。演奏も若いですね。

(最初、15秒ほど動画が動きませんが、もとの動画がそうなっていますので、故障ではありません)

(見られない方はこちらからhttps://www.youtube.com/watch?v=QZkYo93doMw)


古くはカザルスから古今東西の(というほどは聴いていませんが)チェリストが弾いていますが、なかなか、本当に美しい「白鳥」には出会えません。先に書いたように、そこまでの曲ではないのかも知れませんが、私の感受性が鈍ったというのが本当かも知れません。

しかし、マイスキーは動画を見ると、ボーイングや指使いが、その都度、変化しています。
自分の内なる「白鳥」を表現したいんですね。
マイスキー君の演奏は私の感覚からは遠く離れてしまいました(はっきり書くと聞いているのがつらい感じです)が、この演奏は彼なりに素晴らしい情景を作り出していると思います。

(日本人演奏家の白鳥は、どなたも同じボーイング、同じ指使い、同じような表現という感じで、何か教科書でもあるのかァと思ったりしますね)

演奏家に、様々なチャレンジをさせ、「神々しい程に美しい至高の白鳥」を表現したいという思いにさせる魅力がある曲であることは確かです。

アンコールなどでも弾かれるポピュラーな曲ですが、決して簡単に扱っては、いけない曲です。この曲は名曲です。

「簡単に扱って良い曲」 など世の中に存在しないんですけどね。



1 件のコメント:

  1. まったく同意見です。僕の中では、マイスキー(本来あまり好きではないのですが)の冒頭にロジャーダルトリーのナレーション(これいらなかったと思います)が入る動画のものが現在のところ最高だと思います。演奏も堂々とかっちりしたもの、教科書的なもの、、何か義務的な演奏が多いように思います。白鳥は最も「難しい」曲の一つかもしれませんね。

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