2018年6月27日水曜日

サン・サーンス「白鳥」は、なかなか「白鳥」になってくれない件


これは、おやじの長いぐちですので、技術的な参考にはなりませぬ。

美しい情景です
「白鳥」 定番である。言うまでもなく、「ど」がつくほどの定番である。

この曲を弾きたいと思い、チェロを目指した方も多いと思う。

またチェロとヴァイオリンの区別がつかないような人でも、この曲は「聞き覚えがある」という超有名曲である。

アマオケに所属していると、たまに地元の小中学校に慰問に行く時があります。(慰問?)

すると、大抵、曲と曲の合間に、楽器紹介があります。
パート毎に工夫をこらす場面ですが、我がチェロパートは、トップが、「白鳥」の冒頭、4小節を弾いて終わりです。 

これで十分なんですね。

小学生は「あっ これ聴いたことあるう」と興味を持ってくれますし、
先生、保護者の方も「美しい音やねえ」と満足してもらえます。

また他のチェロ団員は、「うちのトップは、ええ音だすやん」と、完全に傍観者になって、「楽器紹介です」と言われ心臓がどきどきすることもありません。
いやあ、いい曲ですよ。

でも調子に乗って、次のフレーズまで弾いてはいけませぬ。
小学生は飽きやすいですからね。




しかし、この曲は難しいです。
ネットで見ると、
「ちゃんと練習すれば大丈夫」
「頑張ればできますよ」
という声が多いですが、そうなんでしょうか。

人前でピアノ伴奏付で弾けといわれると、嫌な曲の一つですね。

理由は、「私がへただから」 がすべてですが、少し嫌だと思う点を書いてみます。 

この曲はA線とD線を使用しますが、A線一本でメロディを紡ぎ出し、かなり高いポジションまで使用します。
結果、少し緊張するだけで、音程が不安定になりやすいです。
二台のピアノ伴奏で、弾かせてもらえたらなあ

また、ピアノと合わせることで、音程の外れが、マザマザと聴いている人にわかってしまいます。

そして、「白鳥」を「白鳥」らしく弾くのはとても難しいです。アマの白鳥はなかなか「白鳥」になってくれません。

実は、プロでも「機械のような白鳥」や「挙動不審な白鳥」は、大量にいますが「美しい白鳥」にはなかなかお目にかかれません。


最初は、冒頭の「ソ」からして、美しく発音させることができません。なんとなくぼんやりとした音しか出ません。

①小指で押さえ
②十分ビブラートをかけ
③はっきり、たっぷり

というのがなんとも。
そのため3の指で押さえる人もいますが。

貧弱な音しか出ないので
「どうせ出ないのなら、いっそのことアップから入るか、マイスキーみたいやし」
なんて安易な考えが浮かぶのもこの段階ですが、素人はアップから出てはなりませぬ。


次は、ソ~ファ#~シの、ファ#→シ にごくわずかにポルタメントがかかりますが、ここが下品になりがちです。

それが嫌な場合は、シで弓を返してしまうという手段があります。アップから入るので有名なマイスキーも、ダウンで入り、シで返すのをやっていたことがあります。

他には、ファ#からシに移動する一瞬、弓を止めてしまう人や、シを移弦してしまいD線で取る人もいます。次のミ~レ~ソも移弦するのだからかまわないという考えでしょう。

いずれもファーンと下がる感じが嫌なんですね。

これらのやり方も、私がやるとファ#とシの間に、不自然な「ま」ができてしまい、いけません。ソ~ファ#~ ッシという感じですね。

やはりこのフレーズはA線で、一弓で流れるように途切れることなく、かつ気持ち良さげに弾きたいところですが、そんなんできるのかあという感じです。

で、そのシを上手に納めて、次のフレーズのミ~レ~ソに入りますが、このミがきれいにパシッととれません。その前のシの伸ばしとの関係が難しいんですね。
シ→ミと上がる時に、シの終わりとミの始まりに、「干渉」を感じさせる弾き方になりがちです。


次々とこんなところが出てきます。一般的に、上行形は何とかですが、下行形が音がへんてこになりやすいです。

途中、一ヶ所だけ高いラを、フラジォで取れるところがあります。砂漠の中のオアシスという感じで、遠慮なくフラジォで取らせてもらいましょう。

A音を開放で出すのはどうかって? 
アマは全然OKと思います。安全第一ですよ。

ただ、プロでもフラジォで取る人がいますし、堂々とA音開放で出す人はいます。プロとしてどうなんですかね。私は、げんなりしますけども。 

そして最後は、ダウンでソを響かせて終わります。ピアノはその間、チャカチャカ、チャカチャカ、と階段を降りるような伴奏をしてくれます。

ここは、実際弾いてみると「長い」です。 
弓元から弾けるボーイングにしましょう。
途中で終わったなら終わったで仕方ありません。平然と何事もなかったかのように弓を返すと、最後、(気持ちが)消えるように終わることとなります。



そして、この曲はこのような数々の困難を一切表に出すことなく、冒頭の写真のように弾かなければなりませぬ。
静かな湖面に白鳥が滑るように、水音もなく・・。


まあ、自分では「これでなんとか」というレベルまできたとしましょう。最後にはピアノ合わせという仕事が待っています。

ピアノはとても厳しい先生です。一つの音のゆるみも許してくれません。練習の時は、なかなかの音程だと思ったのに・・・・。

またチェロを一人で弾いている時は、微妙に音を「高めに」または「低めに」取っていることがあります。それはその方が気持ち良いからです。(えっ、お前の場合は単に音を外しているだけだろって? まあそうなんですけどね)

しかしピアノが相手の時は自分の美学は捨てて、妥協しましょう。いくらこの取り方のほうが美しいといっても、ピアノさんに「そんなこと言うんなら、さよなら」と言われると、チェロ君は「帰ってきてくれよお、君がいないとおれはだめなんだよお」と言うしかありませんからね。

弦楽器とピアノの音程のぞれは、普段はあまり問題になりませんが、白鳥は、音を延々と伸ばしてメロディを取るので、目立つんですね。アマのそれは単に音程を外しているだけですが、プロでも(というかプロだからこそ、かな)微妙にぞれて、気持ち悪い場合があります。

まあ繰り返しますが、アマはまず「F」の音は「F」の場所を押さえろという話ですがね。

 
ちなみにですが、私はこの曲を人前で弾いたことはありません。弾く技量もありませんし、機会自体がないでしょうね。

では、プロはどう弾いているのでしょう
マイスキー君の演奏を聞いてみましょう




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