2010年10月1日金曜日

私の楽器① 1代目のチェロ

   楽器修理中と言うことで、ソフトケースに入っていた1代目のチェロを出して弾いている。この楽器は故郷に帰ってきてから、最初のボーナスをもらった時に東京へ行き、下倉楽器で購入したものである。(とばっかり思っていたが、今から考えると楽器のラベルの製作年代とあわないので、どうも故郷に戻って二年目のことのようである)
   シモーラというブランド名で、下倉楽器がドイツで作らせている楽器で、そのためラベルはドイツ製となっている。№390で価格は40万前後だったと思う。同じような価格の楽器を何台か弾いてみて、一番よく鳴った楽器だった。
  同じような工程で同じような材料を使っている量産品でも、違いはあるものである。
当時の店員さんも「これがいいんじゃないですか」とおっしゃっていた。(この店員さんは、丸顔の眼鏡をかけた女性の方で、15年後に2代目の楽器を探して訪ねたら、その時もおられた。しかし最近行ったらお顔を見かけなかった。もう辞められたのだろうか・・・・・。)
  今の2代目を買う1996年までの15年間はメインの楽器であった。その間、様々な弦に張りかえたり、エンドピンを交換したり、そのたびごとに、音がかわったことを喜んだりしていたことなどは、よい思い出である。この時期は、つらいことも多かったのだが、孤独な時期を支えてくれた楽器である。軽く音の出る、やや大きめの無骨ないかにもドイツを感じさせる楽器である。
   全体によく鳴る楽器で、下手をするとG線は2代目の楽器よりボワンといった感じで、よく鳴る。ただ裏板にパッチをあてる修理を86年か87年に、表板の大修理を88年にしている。特に表板の修理をして以来、音が艶やかさを失ったような感じがする。
  表板と裏板は違う業者による修理である。裏板の時には流れの職人に任せたのだが、すごく高いお金を請求された記憶がある。当時は「楽器の修理は高いもんだなあ」と思っていた。表板の修理は下倉楽器まで持っていったが、料金は良心的というか適正なもので、今度は「こんなものでいいのか」と思った記憶がある。ただ修理の仕方、特に裏板のパッチの当て方などは乱暴な感じで、いくら楽器としては安い方に属するものでも、もう少し丁寧な修理をして欲しかったと今は思う。当時は何もわからなかったので、こんなものかと思っていた。表板の修理も、板が変形してしまっている。これは、修理の痕跡と剥がしたことによる影響だと思うが、剥がして修理をすれば必ず変形するものだろうか。全く変形しないということはありえないという感じもするのだが、割り切れない思いも残るのである。
   修理の技術は(販売もだが)、人や会社によってピンキリで、料金設定も曖昧な部分もあるので、あせって出さない注意が必要だということがわかるのは、もう少し年月がたってからだった。
  AD線は昔は結構、艶やかな音がして、夜、弾いているてしみじみと「いい音だなあ」と思ったことが何回もあるが、表板の修理をして以来、何かを失ったように艶やかさが損なわれている。現在、G線は他の弦と比べて、響きすぎ、ややバランスが悪い状態である。本当は弦の種類を変えて調整した方がいいのだが、あり合わせの弦を張ってあるだけである。(とは言っても、A:ヤーガー D:ラーセン GC:スピロコアという、普遍的組み合わせではある。
またG線のF付近ででウォルフが出る。C線は響かないのは以前からである。しかしこれはこの楽器だけの現象ではない。チェロは、低音はよく響くようなイメージがあるが、案外とC線が張りのある音で鳴る楽器はないものである。
  久しぶりに弾いたら、最初は音が出なかったが、ゆがんだ駒を立て直して、何回か弾いていたら音が出るようになった。音色自体はどうしても2代目には負ける。特に4弦のバランスとA線とC線の音色は、2代目にかなわない。しかし、音量自体はなかなかどうしてという感じである。
   息子が分数楽器を卒業する時に、この楽器を使わせようと思い、一度、隣県の楽器屋さんに調整を頼んでいる。この時、駒は交換しているのだが、駒の足と楽器のフィッティングがあまり上手ではない。駒の高さや各弦高のバランスもよいとは言えない。細かく相談すればそれなりに対応はしてくれるのだろうとは思うけど、まあ、一般的なと言うか、基本的な調整という感じである。なんとなくチェロをあまり弾けない人が調整をしているような感じがする。
 もう売ろうにも売れない楽器だし(修理箇所が箇所なので買い手がつかないと思う)、手放すとすれば廃棄してしまうしかない楽器であるが、思い出深い楽器なので、手放す気にはとてもならない楽器でもある。考えてみれば、この楽器はまだ28歳である。楽器は本来なら何百年も生きるものである。私が元気なうちは手元に置いておこうと思う。

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