四年ぶりにHさんの指揮での第九である。四年前にHさんは、「第九は人類の文化遺産である。」という言葉を言っておられた。まさしく自分で実際、弾いてみると、この言葉の意味が身にしみるほどわかる。まさに曲全体が巨大な建造物にも似て、その存在感に圧倒される思いである。アマオケであっても、取り組みがいのある曲なのである。
そして、この曲に限らず、ベートーベンの曲には、無駄な音符は一つとしてないなあと、弾いていていつも感じる。ベートーベンがどんな人かはいろいろな解釈はあるが、少なくとも音楽に対して真摯で、すごく真剣に向かい合った人だというとは、弾いているとわかる。
反対にチャイコフスキーの曲には、なんでこんなところを繰り返すのか、こんなフレーズは必要なのかなあと感じることが結構ある。才能の無駄遣いという言葉が思い浮かぶ。魅力的なメロディに感心する反面、弾いていて退屈さを感じることも多いのである。
たぶん、内面はやや不真面目な、怠惰なところがある人で、そういう面は人間誰しもではあるが、問題はそういう面を、自分の作った曲にも見せてしまう、心の弱さというか倫理観の弱さというのかな、そういう人だったのではないかという気がしてならない。
ベートーベンがもしチャイコフスキーの音楽を聴いたら、その倫理観から激しく拒絶したのではないかと思う。ベートーベンの音楽に対する姿勢が、何世紀も後の人間にも、心地よい一種の緊張感を与えるのであろう。
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