2010年3月26日金曜日

私の楽器② 2代目のチェロ

私の2代目の楽器は、一応、イタリア(クレモナ)製の手工品1972年製である。
 

お前も所詮クレモナかぶれの一人かとか、自分の分際を心得ろなどのお言葉が聞こえそうですが、私が手に入れた当時は、最近(今は少し落ち着いたようですが)のようにイタリアの楽器を過度に持ち上げるような雰囲気はなく、価格も、イタリアの楽器と、独、仏、英などの楽器に特に差はなかった。またこの製作者も、今のように、商業ベースに乗ってしまったような作り方もしていなかった時の作品である。

良い楽器をと、とっかえひっかえ弾いていたら、ダラ.コスタという人の楽器とこれが残り、値段も同じようなものだったが、4弦のバランスが良かったことや音色も気にいったので、購入した次第である。購入価格も今の価格からは考えられない常識的な価格でした。



年代から考えると、製作者43歳の作品である。ネットで彼のcelloは70年代前半のものを中心に三台ぐらい見たことがある。80~90年代のものはほとんど見たことがなく、2000年以降のものは楽器店のホームページや店頭で販売しているのを数多く見る。

いずれも70年代前半のものは、形と言い色合いといい私のものとそっくりで、このころ同じ手法で何台か作っていたことがわかる。工房を立ち上げ、本格的に製作を始めた頃で、弟子はいたかもしれないが、日が浅く、子ども達もまだ一人前とは言えない(長男は十代後半?)時期である。(まだ)真面目に製作していた頃の作品と考えています。
 

楽器店の彼の作品の紹介文は、それこそ美辞麗句で溢れていますが、基本的に「朗々と良く通る音で、かつ大きな音で鳴る」という楽器ではありません。さほど音量は出ない楽器です。1代目のシレーナのほうがボワンボワンと大音量で響きます。
 

一方、音色はとても上品で聞きやすい音がします。
ただ「秋空のような澄み切った音」ではなく、やや甘めの柔らかい音です。

製作は丁寧で、購入したところの店主さんはパーフリングや渦巻きなどの加工をみて「うまいなあ」ともらしていました。口上手な人ではないので、本当なんだろうと思います。

私は、この楽器で満足していますし、購入時の値段は、性能と釣り合っていたと思います。しかし、今の目が飛び出るような価格に見合う価値があるかというと、それはないと思います。特に最近の彼の作品は、ニスものっぺりとした感じのものもあり、丁寧さが感じられません。今の楽器が当時出てきても、選ばなかったと思いますし、また現在の彼の楽器を購入できるような経済的余裕があるなら、当然、別の人の楽器を選んだと思います。


最近は、不自然な持ち上げられ方をした反動か、彼の作品は売れ残っているようです。また中には評価もよく言わない人もでてきています。しかし、楽器店が書くような内容はオーバーだと思いますが、70年代の楽器は丁寧に作製されており、また彼ならではの音色のする(←これを創造し確立するのは大変ですが、大切な要素ですね)良い楽器だと思います。

新作楽器の評価が落ち着くのは、100年くらいの年月は必要に思いますが、21世紀後半におけるこの楽器の評価は「それなりにしゃれた音のする中堅の楽器」というものでないでしょうか。








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