2015年5月17日日曜日

クレモナの楽器 虚構と真実② 古い楽器と歳月による選別

弦楽器には「古楽器信仰」というようなものがある。
いわく
○古い楽器は特有の音色「シルバートーン」があり、新しい楽器にはこの音は出ない。これは長い間に、木材が変化したためであり、そのため
 ○現在の楽器はいまだに、クレモナの古い名器を超えられない。


私は、これらのすべてとは言わないが、その多くは「伝説」だと思う。理由は クレモナの名器 虚構と真実①参照してください。

なぜこのような古楽器信仰ができあがったのだろう。

古い楽器をひかせてもらうと、確かに個性的な音がしたり、よい音色を出す楽器が多いのは事実である。そのため、古い楽器を探し求める人が出てくるのはわかる。
しかし、これは歳月による選別の結果と考えている。


古い楽器の固有の音は、年月を経たため木材が変質したことや、長年にわたる弾きこみによるものとされている。そういう要素がないとは言えない。しかし良い楽器は、出来た時点で、良い音がしていたのだと思う。そうした楽器だったからこそ人々に愛蔵され、長い時代を生き残ったのである。 そのため残っている楽器は、良い音のする楽器である確率が高いのである。
木質の変化や弾きみによる変化はあるが、その変化は楽器の本来の性能を超えるものではない。響かない楽器、音色の良くない楽器は、いくら弾きこんでも、100年たとうが200年たとうが、響かないし音色は悪いのである。

ス トラディバリウスなどの楽器も、作られた当時から良い音がしていたのだと思う。そのため大事にされ、例え破損しても修理をして使用されて、結果的に現在まで残ったと考えられる。一方、当時作られた楽器でも、良い音の出ない楽器や、いくら弾きこんでも音が悪くなったり、鳴らない楽器は、そのうち捨てられ、また一旦壊れたことなどをきっかけとして、そのまま破棄されたのだろう。
 
この原則は今も同じで、良い楽器はできた時点で良い音がするのである。「この楽器は、今はそれほどではありませんが、ひきこんでいくうちに見違えるように良い音となります」などという言葉を真に受けてはいけません。
 ひきこんで音が変化するかどうかについてはについては弾きこみによる音の変化についてを見てください。

現在、大量に生産され、目の飛び出るような高値で売買されているイタリア クレモナの楽器も、そのうち大部分が厳しく淘汰され、100年もすれば真に良い楽器だけしか残らないだろう。
というか現代のイタリアの楽器は、巨匠とか言われている人の楽器も含め、ほとんど残らないのではないか。

楽器商が作る「伝説」にまどわされることがないようにしたいものである。


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