2014年10月17日金曜日
生きる哀しみ 七五三に想う
七五三の季節になると、思い出す風景がある。もう15年ほど前のことである。
上の男の子が七歳、下の女の子がちょうど五歳になったので、近くの神社に行った。
二人とも、着物である。特に下の女の子は、祖母が自分で選んだ五歳の子にはもったいない高額な着物である。私たちも一応、正装である。
お祓いをしてもらうために、手続きをして神殿に入ろうとした時に、神社に同じような女の子をつれたおばあちゃんがやって来るのが見えた。
おばあちゃんの服装は、家での普段着のままという感じで、子どもは着物ではあるが、背丈は合わせてあったが、決して高価なものでないことは一目で分かるものであった。
なぜおばあちゃんだけなんだろう
おばあちゃんは、女の子の両親に「七五三やらなあかんよ」と言ったけど「そんなもん、いいんでない」とか言われたのかなあ
それで、せめて自分だけは祝ってやろうと思い、量販店に売っている物を買ってきせてやったのかなあ・・・。
などと思いながら、神殿に入った。
お祓いが終わって、千歳飴などグッズが入った袋をそれぞれがもらい外に出ると、もう夕刻であった。
境内に、大きな碁盤の模型がおかれ、そこから飛び降りると健康に育つなどと書いてあったので、子どもたちはおもしろがってかわりばんこに、そこから飛び降りて遊びだした。
そこに先ほどのおばあちゃんと女の子がやってきて、うちの子に混じって、ぴょんぴょんと遊びだした。
しばらくすると、おばあちゃんは次のようなことを呟いた。
「○○ちゃんの七五三は、これで終わり」
子どもに言い聞かせるような言い方だった。
・・・・・・・・・・・・。
高価な着物を着て、神殿でお祓いをして、飴をもらって両親揃って祝ってもらえる子たち。
一方は、おばあちゃんに連れられて、お参りだけして帰る子ども
たぶん、おばあちゃんは、自分の孫が他の子供の姿を見て、うらやましく思うとかわいそうと言う気持ちから、思わず言葉が出たのだと思う。
「○○ちゃんの七五三は、これで終わり・・・」
それだけの話である。
ただそれだけの話である。
しかし、夕闇迫る中、ぴょんぴょん跳んで遊んでいる三人の子どもたちと、それを見ているおばあちゃんの情景が、脳裏から離れない。思い出すと今でも何か哀しい。
あの子も、たぶん今年、成人を迎えるはずである。
どのような子になっているのだろう。
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